なぜ、実りのある勉強会が1年以上も継続しているのか?

この記事はDDD-Community-Jp Advent Calendar 2020 - Qiita20日目の記事です。

モデリング会」という勉強会を1年ほど継続しています。端的に言って、勉強会が1年続くのはすごいことだと自負しています。 エンジニア文脈での勉強会に限らず、自主的な活動が1年も安定して継続している(そして、これからもきっと続く)というのは、やろうと思ってもなかなかできないことでしょう。

しかも、ただやっているだけじゃなくて、多くの実りがある活動です。1つの例としてはアドベントカレンダーです。参加メンバーがこれだけ多くの考えを言語化していることは大変に素晴らしいと思います。

1年続いたのにはワケがある。それを考えたい

なぜ1年も継続しているのでしょうか? 言語化がテーマの会において、この件を考えないわけにはいきません。

特に大切なのは次の2つと考えています。

  1. 初動での重要なポイントを抑えていたこと
  2. 「情熱家」が存在していること(あるいは、生まれたこと)

それぞれについて深堀りしていきましょう。

他の重要な考察については、「1年間続いたオンライン勉強会」秘伝のタレを公開します - jnuank blogにあるので、興味がある方はこちらも読んでいただけると良いかと思います。

1. 初動での重要なポイントを抑えていたこと

勉強会の初動が良かったと思っています。これには自信があります。

具体的には次の2点です。

  1. メインディッシュに集中するために、独断での意思決定を連発した
  2. 迷いを減らすために、勉強会それ自体の初期設計を行った

a. メインディッシュに集中するために、独断での意思決定を連発した

勉強会立ち上げ時には面倒なことだらけ

勉強会の初期段階は、決めなくてはいけないことが多いです。

  • 何を題材にモデリングをするか?
  • いつやるのか?
  • どこでやるのか?
  • タイムテーブルはどうするのか?
  • プログラミング言語は何を使うか?
  • ツールは何を使うか?
  • 連絡経路はどうするか?
  • などなど

ここが非常に面倒くさいのです。本当に面倒くさい(僕らはモデリングやプログラミングをやりたいだけなのに!)

面倒くさいことは長続きしません。しかし、これらの面倒くさいことは決めなくてはなりません

初期段階においてはお互いのこともよくわからないし、互いに牽制しがちです。チームビルディングもコミュニケーションも何もありません。そうなると、なんとなく黙っている時間が長くなったりします。要するに、決まらないのです。

意思決定の高速化については、この記事をお手本しています。 konifar-zatsu.hatenadiary.jp

独断による解決

そこでどんな策を実行したかというと、「独断での意思決定」を繰り返しました。

「独断です!」と高らかに宣言しながらバシバシ決めるのです。間違っているとかそういうことは気にしない。意思決定をすると、先に進みやすくなります。なぜなら責任をとらなくていいからです。つまり、面倒くさくないのです。これなら気力も体力も消耗しない。だから、やりたいことにエネルギーを注げるわけです。

もちろん、独断で決めるには勇気が必要です。いろんな恐怖を乗り越えなくてはいけません。勇気だけでなく理屈や言葉も必要です。そのための対策は後述します。(b. 迷いを減らすために、勉強会それ自体の初期設計を行った」にて)

独断ではあるが、独裁ではない

勘違いしてはいけないのは、独裁ではない点です。相手の意見も聞くし、取り入れる。前言撤回もいとわない。そのかわり、迷う場面ではガンガン決めるのです。

b. 迷いを減らすために、勉強会それ自体の初期設計を行った

過去に主催した(参加した)勉強会を振り返ってみると、「○○を勉強したい」→「勉強会の開催だ!(参加だ!)」というパターンばかりでした。

つまり、「勉強会」ではなく「何を勉強するか」にしか興味がありませんでした。もちろん、これだけでも十分に価値はあります。しかしながら、同じパターンでは勉強会が継続させられないことは経験的にわかっていました。勉強会が長続きしないということは、継続によってのみ到達できる景色を眺めることができないわけです。

そんなことを考えながら、1日かけて @jnuankと2人で勉強会の設計をしました(彼がいなかったら間違いなく成立していませんでした)。思えば、この最初の行動こそが最も意義のある重要な選択でした。

モデリングの題材やタイムテーブルもその場で決めました。ここもしんどい部分でしたか、ペアワークによってなんとか明文化するところまでいきつけました。

設計の効用は迷いが減ること

これは前述の主張と関連するのですが、バシバシ意思決定ができるのは、意思決定基準とそのプロセスがあるからです。

「決めよう!」と意気込むだけでは限界があります。決定を支える土台がないと簡単に迷子になってしまいますからね。

具体的にどのような設計にしたのか?

テーマや設計に関する詳しいことはこれらの記事をご覧ください。

2. 「情熱家」が存在していること(あるいは、生まれたこと)

つづいて、ポイントの2つ目です。前述までの具体的な話に比べると、やや曖昧な話ですが、情熱は間違いなく重要です。

モデリング会には多くの情熱家が存在します。この情熱家の存在が、継続のみならず、実りのある活動に大きく寄与しています。

情熱家とは一体なにか?

一言で言えば、「学びに対して、真摯な態度を貫く人」というイメージです。

とにかく面白がるし。我慢強さや粘り強さがある。失敗に対して寛容さを持ち、ある種の楽観さをもっている感じでしょうか。

少々わかりづらい部分があるので、次の引用を読んでみてください。

情熱家はそれを表に出さない。心に秘めている。それが生き方に表れてくる。粘り強さ、気概、真剣さ、すべてをなげうって没頭する姿勢といった情熱家の資質は、履歴書でははかれない。また必ずしもすでに成功しているとは限らない。何かに本物の情熱を抱いている人は、最初はうまくいかなくても努力を続ける。情熱家に失敗はつきものだ

エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ. How Google Works (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1817-1820). Kindle 版.

あるいは「ラーニングアニマル」と呼ばれるものかもしれません。

ただ、知力だけでも足りない。とびきり優秀な人でも、変化のジェットコースターを目の当たりにすると、もっと安全なメリーゴーラウンドを選ぼうとするケースはやまほどある。心臓が飛び出しそうな体験、つまり過酷な現実に直面するのを避けようとするのだ。ヘンリー・フォードは「人は学習を辞めたとき老いる。二〇歳の老人もいれば、八〇歳の若者もいる。学びつづける者は若さを失わない。人生で何よりすばらしいのは、自分の心の若さを保つことだ」と言った。グーグルが採用したいのは、ジェットコースターを選ぶタイプ、つまり学習を続ける人々だ。彼ら〝ラーニング・アニマル〟は大きな変化に立ち向かい、それを楽しむ力を持っている。

エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ. How Google Works (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1849-1855). Kindle 版.

情熱家の特徴が掟として明文化されている

この感覚は、モデリング会における「4つの掟」にあらわれていると思います。

  1. 論よりコード、論よりモデル:

    • 口頭で議論するなら、コードや図を並べて議論すべし
  2. 無責任デリゲーション (っ'-')╮ =͟͟͞(責任) ブォン

    • 迷ったら誰か1人に無責任に決断を委ねるべし
    • 多数決はスピードが出ないので、「◯◯さん、決めてください」と無責任に投げる(この委譲に関しては合意している)
  3. ワールドメーカー【俺がルールだ】

    • 誰かが提案したら、いいぞー!と称えるべし
  4. まずは負けてみる(ゴン・フリークス@天空闘技場)

    • 実験なので、率先して間違うくらいの気持ちでいくべし

情熱家はどこからきたのか?

これは最初から情熱家だったのかもしれませんし、途中から情熱家になったのかもしれません。そして、なぜ集まったかの理由はわかりません。偶然かもしれないです。どうやったら情熱家になれるかもわかりません。でも、とにかくそこに居ます。

まとめ

1年も継続している勉強会の理由について考えました。

  1. 初動での重要なポイントを抑えていたこと
  2. 「情熱家」が存在していること(あるいは、生まれたこと)

記事を書きながら改めて思考した結果、やはりこの2つはとても重要に思えます。

今回は初動の重要性が中心でしたが、継続は初動だけでは叶いません。変化も必要ですし、具体的なテクニックも必要です。その話については、ぜひ 「1年間続いたオンライン勉強会」秘伝のタレを公開します - jnuank blog をご覧ください。